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配転命令の有効性について

配転命令の有効性について

1.配点命令の有効要件

  ① 使用者が配転命令権を有することが労働協約、就業規則等により労働契          約上根拠づけられていること
  ② 配点命令権の行使が権利濫用にならないこと

2.①の要件について

    使用者と労働者の間の労働契約上、職種、勤務地が限定されているものと判断されれば、使用者は配点命令権を有しないこととなる。

 参考判例

 ア 日産自動車村山工場事件(最一小判平元年12月7日判決労判554-6

 イ 東京地裁平成24年 2月27日ウエストロー・ジャパン

(2)職種限定契約の主張について
 上記認定事実によれば,原告は,被告において,IT技術者として,被告の顧客のもとで,コンサルティング業務を行なうことを予定して採用されたことは明らかである。しかし,「職種限定契約」というのは,使用者の人事権なり配転命令権に基づいて,当該職種以外の職種の業務に従事させたら,契約違反になるという法律効果を生じさせるという概念なのであり,上記認定事実によれば,原告は,被告に採用された当時,この概念を知らなかったのであるから,その一事をもってしても,本件雇用契約上,上記の意味における職種限定契約が締結されたとは解し難いと言わざるを得ない。原告は,本件雇用契約の契約書及び採用通知書に「ITコンサルタント」として雇用されることが記載されていることを職種限定契約の趣旨である旨の主張をするが,上記の各書面には,上述の意味の職種限定契約の合意を窺わせる記載がないし,そもそも「ITコンサルタント」という用語に,例えば国家資格のような,明確な意味を有する概念があるわけではない。むしろ,上記認定事実のとおり,被告社内では,従業員がITコンサルタントと呼称されるのは,ごく一般的なことであって,人事総務部長のEが,人事,経理担当者を「専門職」と呼称していることは,それだけ被告社内では,ITコンサルタントは専門職ではなく,そのように呼称されることがごく一般的なことであることを端的に表しているといわなければならないのであり,職種限定契約に関する上記原告の主張を採用する余地はないと言わざるを得ない。」

 

3.②の要件について

 参照判例

 福井地裁平成28年 1月15日判決判時 2306号127頁

 「(2) 以上の認定に対し,被告は,原告が本件配転命令発令前に長野支店への異動を承諾していた旨主張し,Bの証言中にはこれに沿う部分もあるが,10月18日以降の原告とBとの間の会話の録音(証拠〈省略〉)からは,原告が1度でも上記異動を承諾したとはうかがわれないから,にわかに採用することができない。
  (3) 前記(1)の認定事実によれば,①本件賞罰規定は,原告ら「M社員」に対し,地域的特性も考慮することなく,困難な売上高の達成を求めるものである一方で,それが1か月でも達成できなかった場合には,直ちに,固定給を月額10万円減額するか,被告の決定する他の支店に異動させるという制裁を課すものであること,②前記のとおり,本件賞罰規定上の制裁措置として,実質的な降格と配転命令があったが,被告は,原告が制裁対象となった後,繰り返し申請に基づく降格か自主退職かを選ぶよう求めるだけで,配転命令については言及していなかったこと,③被告側から連日のように働き掛けたのに,原告が降格に応じようとしなかったため,異動先の内示も全くないまま,突如,本件配転命令を発令したこと,④Bは,原告に対し,本件配転命令発令後,直ちに異動先の長野支店に向かうよう指示し,これに応じないのであれば自主退職をするしかないと述べたことが認められる。
 以上の事実によれば,まず,本件賞罰規定による制裁は,その発令要件との関係で過酷にすぎ,著しく不合理であるといわざるを得ない。また,本件賞罰規定は,制裁措置として「S社員」等への実質的な降格の他に配転命令を挙げてはいるが,被告は,制裁対象となった原告に対し,自主的な降格又は退職のみを勧め,原告がこれらのいずれにも応じずにいたところ,突如として本件賞罰規定に基づいて本件配転命令を発令し,これに応じない原告に対して,やはり自主退職を促したというのであって,本件配転命令の根拠となった本件賞罰規定の目的は,専ら固定給の高い「M社員」を減らすという点にのみあったと認められる。
 さらに,前記認定の事実によれば,原告は,本件配転命令発令まで,50年近く福井市内で暮らし,発令当時は妻子と同居していたと認められるところ,内示もないまま突如として長野支店への異動を命じられることは,原告及びその家族にとって生活上著しい不利益となることは明らかである。
 以上によれば,本件配転命令は,被告が主張するように,原告の能力開発,勤労意欲の高揚に資する面が全くないわけではなく,業務上の必要性が皆無であったとはいえないことを踏まえても,被告の権利の濫用によるものであって,違法であると認めるほかない。
  (4) これに対し,被告は,「M社員」から「S社員」への変更や,他の支店への異動は一概に従業員に不利な取扱いとはいえないなどと主張するが,その主張は,それらが本件賞罰規定において制裁措置として規定されていることと整合的でないから,到底採用できない。」

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